コピーライティングの考え方【LEAPH勉強会レポート】

~別れの季節にギフトを贈りたくなるコピー編~

 LEAPHの蓬生です。

 12月某日、「第11回コピーライティング勉強会」が行われました。コピーライティング勉強会は、言葉に対する感度を高め、営業や企画に活かしていくことを目的とし、2021年月に一回のペースで行いました。

 先生は大阪を拠点に活躍されているバリバリ現役のコピーライター。いつもコピー業界におけるノウハウをわかりやすく言語化してくださいます。

 今回のお題は「別れの季節にギフトを贈りたくなるコピー」です。

良いコピーの定義とは?

 勉強会は、私蓬生が初参加ということもあり、コピー業界における基礎的な考え方の復習から始まりました。まずは、「この勉強会における良いコピーとはなにか?」について、先生からお話しがありました。良いコピーとはずばり、

人が動くか?

発見があるか?

の二点を押さえているかが重要となります。その上で、戦略と表現が求められるのです。

 広告コピーとは、「ビジネスや社会の課題解決のために、対象物への認識を変化させる言葉」なのです。だからこそ人を動かす「戦略」がいるし、認識を変えるための発見が必要となってきます。

 たとえば、今回のお題である「別れの季節にギフトを贈りたくなるコピー」を例にすれば、このコピーを読んだ《ギフトを贈らない人》が《ギフトを贈る人》に変化すれば目的達成です。

 その過程で、「おっ、ギフトにはこんな効果があるのか!」と発見を促し、「じゃあ、今年はギフト贈っちゃおうかな」と行動につなげる必要があります。そのための、戦略と表現を学ぶのがコピーライティング勉強会なのです。

メリット or デメリット

 コピーを考えるとき、まず、メリットからアプローチするかデメリットからアプローチするかを考えます。

 メリットからのアプローチとは、「〇〇するとこんな良いことがあります」という前向きな提案のことです。一方でデメリットからのアプローチは、わかりやすいところで言えば保険のセールスです。「もしも事故や病気で入院したらこんなにお金がかかりますよ!」のように、不安を煽ることで商品を買ってもらう方法です。

コピーを考える3ステップ

 さらに、コピーを考えるには以下の3ステップがあると言います。

  ①何を提案するか決める

  ②言いたいことを決める

  ③それをどのように言えば一番伝わるかを考える。

 とくに、①の「何を提案するか」は大きく4つに分けられます。

 それを考える際の指標となるのが下記の図、「コピーを書くときの4つの窓」です。

 上記を意識することで、様々な角度から提案内容を考えることができるようになります。

講評

 ここから蓬生と河原崎の提出したコピーを掘り下げていきます。

【蓬生案1】

思い出すきっかけをあの人に

 このコピーには、「贈って終わり」ではなく、その後の物語を想像させる意図がありました。昔の恋人がくれたプレゼントを見るたびに、彼・彼女と一緒にいた時間を思い出してしまうことってありますよね。そんなふうな、「思い出すメリット」を提案したかったのです。

 しかし、このコピーは「動かす」という点で少し弱いのではないかと先生はおっしゃいます。「そういう効力があるのか!」と発見させるまではよいものの、そこから「じゃあ、プレゼントを贈ろうかな」という行動につながりにくいのです。

 繰り返しになりますが、広告コピーとは読んだ人の行動を変化させてこそ成功と言えます。行動につながらなければ、いくら叙情的(今風に言えば「エモい」)であっても意味がありません。

 では、どのようにそれを達成するのか?

 同じアプローチ方法で、先生が示してくれた例がこちらです。

【改善例1】

もらった贈り物を見ると、

もらった人の顔が浮かぶから。

離れ離れになるあの人に、贈ろう。

【改善例2】

これで、たまには思い出してくれるかな。

そんな気持ちで贈り物を選んでもいいと思う。

 蓬生の書いたものより、当事者の気持ちに寄り添い、「じゃあ、贈ろうかな」という行動を促す効果が強まったように感じられますね。

【蓬生案2】

ほんとうは渡したくないし、

お別れもしたくない。

 否定から入ることで「?」を与え、後半で「!」とさせることを目的に書いたコピーです。

 先生曰く、「恋い焦がれる女性の姿が浮かんだ」とのことでした。たしかに、「離れないでほしい!」という気持ちは、表れている気がします。

 しかし、共感させたりイメージさせるコピーとしてはそれなりですが、「ギフトを贈りたい」という認識の変化をつくるという意味ではやや弱く感じられます。このコピーでは、「共感!」で終わってしまいかねません。

 行動につなげることを意識した例がこちらです。

【改善例】

わたしのこと、忘れないで。

そう思ったら「毎日使うものプレゼント作戦」です。

 先生のコピーには読んだ人に、「忘れてほしくないよね? だったら……」と訴えかける効果があります。〈わたしのこと、忘れないで。〉までは同じニュアンスですが、〈そう思ったら〜〉を付け加えることで贈り物までの動線ができたのがわかります。

 また、〈毎日使うもの〉という提案をすることで、ギフト選びのハードルが下がっているのにも注目です。〈プレゼント作戦〉という響きも可愛らしいですね。

【蓬生案3】

サヨナラは言えなかったけどキモチは渡せた。

 面と向かって「ありがとう」を言うのは気恥ずかしい、でも、伝えたい。そんな言葉にできない想いをギフトに託すイメージで書きました。

 これもまた感情に訴えかけるコピーですが、〈キモチは渡せた。〉だけだと、手紙なのかギフトなのかがわからないとの指摘がありました。たしかに、写真やビジュアルがない場合、キモチがなんなのか伝わりにくいですね。

 言葉だけで伝えるときには、誰が読んでも贈り物が思い浮かぶように書かなければいけません。

【改善例】

先輩、私のこと忘れないでくださいね。

言えない分、プレゼントに込めた。

 後輩が先輩にあげると言う具体的なシチュエーションとともに、〈プレゼント〉という言葉があることで、ビジュアルが浮かびやすくなっていますね。

【河原崎案1】

また来年度一緒に働ける先輩への、

「よろしく、お願いします。」の挨拶に。

 異動する先輩にだけ贈るイメージだったギフトに、「異動しなくてもあげていいんだ」という新たな発見、価値を与える目的で書かれたコピーです。贈り物をする対象を増やしてしまうという点で、非常に戦略的なコピーに思われます。

 プロモーションとしてはこれでOKですが、「たしかにそうだな、あの先輩にも贈ろう!」と思ってもらうにはもう少し心を動かす必要があります。

 そこで、「来年も一緒に働く先輩にギフトをあげるとどんなメリットがあるのか」まで踏み込んだ例がこちら。

【改善例1】

「ほかの先輩の送別品を買いに行ったら、

これは先輩にぴったりだと思って…どうぞ。

来年度もよろしくおねがいします」

デキる後輩、出来上がり。

【改善例2】

「今年度もお願いします」の贈り物は、

みんながしない分、目立つ。

 下心を利用したコピーです。〈デキる後輩〉になりたくない後輩なんていませんよね。強かさとともに、強力な〝発見〟があるコピーになりました。

【河原崎案2】

令和3年度のわたし、おつかれさま!

 さよならをする友人知人にだけギフトを贈る習慣を、根本から変えてしまおうという戦略があります。自分を甘やかす〝言い訳〟を与えてあげると、商品購入のハードルが一気に下がることでしょう。

 こちらも「なぜ年度末に自分へのご褒美なのか?」をもう少しはっきりさせるとご褒美欲が高まります。

【改善例1】

忙しい年度末は、

自分へのご褒美のタイミングです。

【改善例2】

誕生日、クリスマス、年度末。

ちゃんと自分を甘やかしましょう。

「頑張った皆さん、今こそご褒美のタイミングですよ!」と訴える力が強まったように感じられますね。

【河原崎案3】

子どもの就職祝いに。

子育て頑張った、わたしに。

 誰かのギフトを買いに来たのに、ついつい自分の分も買ってしまうコピーを目指しました。ターゲットは子どもの就職祝いを探しに来たお母さんで、子育てに掛かっていたお金が浮いた分を自分のために使ってもらう意図があります。

〈子どもの就職祝い〉という切り口が新しく、コスメなんかはここにピッタリです。表現で、ちょっとお茶目さを足してあげると「買っちゃおうかな」というテンションも高まるのではないでしょうか。

【改善例】

子どもへの就職祝いと、

自分への子育て終了祝いは、

セットで必要です。

〈セットで必要です。〉と言い切る形にすることで、「セットで必要なら仕方ないよね!」とお母様方の〝言い訳〟を後押ししてあげる効果が狙えます。

総評

 講評を終えてみて、蓬生のコピーは別れを告げられた側の感情に訴えかける傾向にあり、河原崎のコピーは商品を売りたい企業側に寄り添う傾向にあることがわかりました。

 どちらも戦略としては悪くありませんが、もう少し視点のバリエーションを増やすことができれば刺さるコピーが生まれやすくなるとも言えます。

 そこで役に立つのが、先ほども出ました「コピーを書くときの4つの扉」です。二人のコピーの分布を4つの扉に対応させると以下のようになります。

 二人のコピーは、商品・企業、ターゲットに対応するものだけで、競合、社会・時代がありませんでした。もし、すべての扉に対応するコピーを書くのであればこのようになります。

【商品・企業の扉の例】

小さなプレゼントを添えるだけで、

「ありがとう」はもっと伝わる。

【ターゲットの扉の例】

「ただの先輩」と、

「プレゼントをくれた先輩」は、

やっぱりちがうもんだ。

【競合の扉の例】

寄せ書きもいいけど、

やっぱりモノってうれしいですよね。

【社会・時代の扉】

盛大に送別会はできない今だからこそ、

ちょっと豪華なプレゼント。

 訴えかける対象のチャンネルが増えたのがわかります。

 また、視点を鍛える方法として、携帯電話に登録されている知人・友人に商品をお勧めするイメージでコピーを考えるという方法が効果的だと言います。具体的な人物の顔を思い浮かべながら、「○○さんだったらどこに関心を持つだろう?」と考えることは、4つの扉を自由に行き来するためのよいトレーニングになります。

エピソードと普遍の往復

 もう一つ教わったテクニックが、「エピソードと普遍の往復」でした。

 コピーを考える上で、思いついたエピソードが個人的すぎると説明が長くなって伝わりにくいですし、一方で、情報が抽象的すぎると他人事のように響いてしまいます。したがって、具体的なエピソードと抽象的な普遍性の間で、読んだ人の心にもっとも刺さる地点を探し出すことが求められます。

「エピソードと普遍の往復」とは、先にエピソードを思いついたら、その中から普遍的な言葉を抜き出してみて、反対に最初に普遍的な言葉を思いついたら、そこから生まれる身近なエピソードを考えてみるテクニックです。

 たとえば先生の体験で、会社の先輩が紅茶のパックと「いつもありがとう」と書かれたメモをくれた体験があったそうです。これを今回のお題に則してコピーにするとこうなります。

【個人のエピソード】

「ありがとう」のメモと紅茶をくれた先輩のことは、よく思い出す。

 とても個人的な体験に焦点が当たっていますよね。このエピソードの画角を広げ、普遍性を取り出すと以下のようになります。

【普遍】

小さなプレゼントを添えるだけで、「ありがとう」はもっと伝わる。

 このように個人のエピソードと普遍的な事象・言葉を行ったり来たりしているうちに、もっとも伝わるコピーに肉薄していきます。

おわりに

 日頃、何気なく目にしているコピーには、企業の戦略が詰まっているのです。優れた企業ほどコピーに力を入れている理由がわかりますね。

 ここで学んだテクニックを今後の企画に活かしていければと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。