2023.07.05
まちにオール静岡で応援できるプロスポーツチームがある意味 | 静岡ブルーレヴズ株式会社 山谷拓志社長インタビュー
ラグビーワールドカップの感動を、我々は日常にしたいんです。
そう熱く語るのは、静岡ブルーレヴズ株式会社の山谷拓志社長です。
日本初のプロラグビーチーム「静岡ブルーレヴズ」。かつては、ヤマハ発動機のラグビー部として発足した社会人チームでしたが、2021年の新リーグ発足を機に分社化、静岡から世界を魅了するために動き出しました。
その代表に抜擢されたのは、過去にプロバスケットボールチームである栃木ブレックス(現:宇都宮ブレックス)を日本一に導き、存続が危ぶまれた茨城ロボッツを再建した山谷拓志社長でした。
今回、静岡みんなの広報は、山谷社長にプロスポーツチームが地域に与える影響やラグビーによる地域活性化の可能性について伺いました。
まちにプロスポーツチームがある意味
静岡ブルーレヴズが誕生してからもうすぐ2年。我々を支援、支持してくださる方々は着実に増えています。ありがたいことです。
しかし、「まちにプロスポーツチームのある意味」を訴えていく必要性は、まだまだ感じています。
たとえば、静岡県の西側に位置する浜松市は、人口が80万人もいる大きな都市の中では珍しく、サッカー・野球といった試合数の多いスポーツのプロチームがありません。くわえて、1万人以上が収容できるサッカー場や野球のスタジアムもありません。
欧米で考えたらこの規模の都市には、メジャーリーグやNBAなどに所属するチームが必ずと言っていいほど拠点を構えています。
でも、浜松にはそれがない。浜松にはヤマハやスズキといった世界的企業を始め、高度な技術を有する企業が集積しているため、経済的に潤っていました。そのため、これまではスポーツによる地域の活性化を必要としてこなかったのではないか、と僕は推測します。
浜松市は、我々が拠点を置く磐田市のすぐ隣ですから、オール静岡を標榜する静岡ブルーレヴズとしては、積極的に開拓していきたいマーケットです。見方によっては、これはピンチと言えます。
「スポーツを使ってまちを活性化させましょう」という訴えが響きにくいかもしれません。でも逆に、経済が潤っているのならスポーツに支援をしてくれる可能性も高い。つまり、チャンスとも捉えられます。
ピンチとチャンスは表裏一体です。
誰もやっていないのならば、我々がやればいい。地元チームを応援する文化を根付かせ、スポーツで地域を活性化させていく開拓者になれるように、これからも邁進していきます。
スポーツに好意的なまち、静岡
チームのスポンサー集めは、もちろん大変ではありましたが、静岡には反応のいい企業さんが多い印象です。
理由としては、スポーツを応援する土壌が整っていたことと、ラグビーワールドカップ2019の開催地であったことが考えられます。
静岡県はもともとサッカー王国じゃないですか。Jリーグのクラブチームが4つもあるし、高校サッカーで母校を応援するみたいな、スポーツに触れる文化が整っています。
つまり、「なぜスポーツを応援するのか?」というところの説明がいらないんです。
また、2019年、ラグビーワールドカップが静岡の地で開催された時の興奮を、地元の方々が鮮明に覚えていることも、応援していただく理由になります。
あの日、日本は格上のアイルランドに逆転勝利をし、日本中が熱狂の渦に包まれました。試合を観戦した人々を始め、試合を見てない方でも、あの時のまちの賑わいを思い出せる方が静岡にはたくさんいらっしゃる。
経営者の中にもあの試合に心動かされた方がいらっしゃいました。「ラグビーワールドカップの感動を、我々は日常にしたいんです」というお話をさせていただくと、興味を持ってくださることも多かったです。
「楽しかった」ではなく「感動した」
先ほどお話ししたように、静岡県はサッカー王国です。サッカー人気がラグビーのライバルになるのではないか、とも考えていました。
しかし、実際に静岡に来て活動してみると、たとえサッカーのスポンサーをしている企業さんでも、ラグビーとの差別化をしっかりできれば協賛してもらえるとわかりました。
差別化のポイントは二つあります。
一つ目は、人と人が本気でぶつかり合うコンタクト競技であるということ。
二つ目は、ラグビーという競技そのもののファンが多いことです。
まず、コンタクト競技であるという点について。
ラグビーでは、普段はなかなか見ることができない本気のタックル、ぶつかり合いを当たり前にやっています。それが人々の心に訴えかけるものがあるのだと、最近になって思うようになりました。
あるファンの方が「他のスポーツは終わった後に『楽しかった』と思うけど、ラグビーは『感動した』と思える」とおっしゃっていたのが印象的でした。
たしかに、試合を観戦した多くの方々が「感動しました」とコメントをくださいます。それが、たとえ負けた試合であったとしても。不思議ですよね。
人と人とが全力で体をぶつけ合う。自らの体をチームのために犠牲にする。そういったラグビーならではの躍動が、「楽しい」とは違ったベクトルの感情を引き起こし、見る者を魅了するのかもしれません。
次に、ラグビーという競技そのもののファンが一定数いらっしゃることも差別化のポイントです。
「役割分担」や「犠牲の精神」といったものが会社運営に近いイメージを与えるのか、経営者の方々にラグビー好きが多いように感じます。ラグビーが盛んな大学を卒業された方も多く、すでに競技への愛着があるように見受けられます。
だからかもしれませんが、バスケットチームを運営していた頃とスポンサー獲得の感覚が違いました。ラグビーは他のスポーツに比べて試合数が少ないんです。スポンサー企業としては、たくさん試合をして、企業の宣伝をしてほしいじゃないですか。
それでも、そういったメデイア露出のメリットデメリットを抜きにして、「ひと肌もふた肌も脱いで応援するぞ!」みたいな雰囲気を、ラグビーというスポーツは持っているみたいです。
また、一般のファンの方々にも、「このチームのファンです」という方よりも、「この選手が見たい」とか「このチームとこのチームの試合が見たい」というような、広い括りでのファンが多いように感じています。試合があるごとに、東京から足を運んでくださる方もいらっしゃるくらいです。
つまり、ラグビーには県外からも人を呼べるポテンシャルがあると考えています。
スポーツ観戦を兼ねる旅行は「スポーツツーリズム」と呼ばれ、世界の旅行業界でも注目されている分野ですが、この特性を活かし、県外から人を呼び込むことで観光の側面からも盛り上げていきたいです。
「県外から人を呼ぶ」という意味では、このオフィスにいるスタッフの半分も県外から来てくれています。
スポーツチームの運営は、他のビジネスとちょっと毛色が違うというか、あまり世の中にある業種じゃないじゃないですか。
見る人を楽しませる。感動させる。そのコンテンツホルダーとしての仕事ができるっていうのは、非常にエキサイティングなところですね。
スポーツに関わる仕事は、アメリカではDream Jobと呼ばれるくらい夢のある仕事であり、この業界自体が大きな魅力を持っています。
実際、今まで静岡にもラグビーにも関わりがなかったけど、「感動を与える仕事をしたい」ということで、うちのオフィスに来てくれたスタッフもいます。このように、雇用の面でも地元に貢献できればと思います。
オール静岡で応援できるチーム
2022-2023年シーズン最終戦では、1万2000人もの観客が試合会場に足を運んでくださいました。
コロナを経た中では圧倒的な来場者数で、「我々がやってきたことに間違いはなかった」と自信に繋がりましたね。
ただ、これで満足しているわけではありません。今後は最終戦だけではなく、シーズンの要所要所で来場者1万人を超える状況をスタンダードにしていきたいです。
そのためにはまず、静岡県の方々全員に愛されるチームになりたいですね。
我々、静岡ブルーレヴズの「静岡」は、静岡「県」を指しています。「オール静岡で応援いただけるチームですよ」というコンセプトでやらせてもらっているのを、ここで主張しておきたいです。
たとえばサッカーですと、静岡には4つもプロチームがあり、それぞれ清水・磐田・藤枝・沼津というように、拠点のある市を名前に冠しています。だからかもしれませんが、住んでいる場所に近いチームを応援する文化が地元の方々に浸透しているようです。
これは静岡が横に長い県だからかもしれませんが、スポーツに限らず、土地柄や市民性といった文化の違いをよく耳にします。
静岡で言えば、中心部の静岡市には穏やかな性格の人が多い。一方で、静岡の西側、浜松市にはやらまいか(遠州弁で「やってやろうじゃないか」の意)の精神が根付いており、チャレンジングな性格の人が多い——そんな捉え方が根付いていますよね。
しかし僕は、そういった市民性や土地柄は思い込みだと考えています。「静岡はこんな土地だ」みたいなことを長い間言い聞かされて、知らず知らずのうちに影響を受けてしまったのではないかなって。
たとえば、僕が過去に携わったスポーツチームは栃木とか茨城にありました。この二つの土地は保守的で、新しい文化が根付きにくいなんて噂されていましたが、そんなことは全然なく、新しく生まれたばかりの僕らのことを積極的に応援してくれました。
だからというわけではありませんが、静岡に住んでいる方々には、市民性や土地柄、文化といった先入観なく、接点さえあればどなたにも気軽に静岡ブルーレヴズを応援していただけると思っています。
ラグビーで地域を盛り上げる
チームのファンを獲得すると同時に、ラグビー自体の認知度向上も図っていきたいと考えています。
ラグビーという競技は、サッカーや野球に比べるとまだまだファンが少ない。どれだけブルーレヴズが人気になろうと、ラグビーというスポーツのファンが少なければ天井が限られてしまいます。
競技のファンを増やすには、ラグビーと地元の方々の接点を増やさなければいけません。
具体的には、県内の広い範囲で普及活動やラグビー教室に取り組んでいます。その中で、ラグビーを習いたい子どもたちの受け皿として、スクールやアカデミーも展開しています。
とくに、今年はラグビーワールドカップが開催される年でもあります。興味関心が高まる時期に受け皿がないのは本当にもったいないし、申し訳ない。だから、我々にできる範囲でフォローをしていきたいと考えています。
そんな想いもあり、静岡ブルーレヴズはさまざまな市区町村とパートナーシップ協定を結ばせていただいております。これはスポーツの振興や子どもたちの健全育成などを目的とした協定です。
我々の存在が地域の活性化に少しでもよい影響を与えられれば幸いです。
▼ブルーレヴズ公式noteはこちら▼
https://note.shizuoka-bluerevs.com/
▼静岡ブルーレヴズの盛り上がりがわかるYouTubeチャンネルはこちら▼
https://www.youtube.com/c/yamaharugby-shizuokabluerevs
カテゴリ
こんな記事はいかがですか?