2023.04.19
社員に合った働き方を模索する~イシダテックインタビュー社長編〜
採用のために始めた情報発信でしたが、思った以上に多くの方々に読んでいただけているようで幸いです。
——そう語るのは、食品・医薬品関連製造機械をオーダーメイドで企画・設計・製造するメーカー、株式会社イシダテックの石田尚社長です。
昨今では社内の様子を書いたnoteの記事が人気となり、広報の小山さんがセミナーに登壇をされるなど、活躍の場を広げています。また、同社はリモートワークや時間有給制など、新しい働き方も積極的に取り入れているといいます。
静岡みんなの広報は、新しい働き方を導入した経緯やイシダテックのnoteには表れない石田社長の本音に迫りました。
採用のために始めた情報発信
父の跡を継ぐ形でイシダテックの社長に就任した際、「これは手を加えないとマズイな」と思った部分が多々ありました。
その一つが採用です。
今まで外への情報発信がまったくできておらず、一部の食品製造業者さまにしか知られていない会社となっていました。
多くの中小企業が抱えている悩みだと思うのですが、大手のリクルートサイトに採用情報を掲載してもらっても、あまり注目されないという問題があります。
どうしても、名前の知れている企業や待遇の良い企業の陰に隠れてしまいますよね。弊社も同じような悩みを抱えていました。
私が2015年の暮れに会社に入ってから3年間は、就活生の一本釣りを得意とする媒体を通し、興味を持ってくださった学生さんを工場見学に招待していました。
工場見学に来たらみんなおもしろがってくれて、そこから採用に至ったケースもあります。百聞は一見にしかず、やってることを見せた方が早いわけですね。
うちの仕事は「響く人には響く仕事」という自負があって、新卒や中途採用関係なく、ものづくりが好きな人や自分のつくったものでお客様のお役に立ちたいと考える人には楽しめる仕事だと思っています。
ただ、学生さんたちに興味を持ってもらうまでの導線ができていませんでした。
以前、広報の座談会で弊社の小山が話していたように、名前を知らない会社に入社したいとは思えません。なのでまずは、多くの人々にイシダテックを知ってもらう必要がありました。
▼座談会の記事はこちら▼
企業の広報ってこれであってますか? 〜広報担当三人による座談会〜
「とりあえずホームページやSNSで情報発信を!」と思ったものの、まったく更新が追いつきませんでした。社員たちは発信が下手というわけでもないんですけど、恥ずかしがり屋なのか、自ら表に出していくのが苦手な様子。
でもね、社員たちに話を聞いていくとすごくいい話をしてくれる。
うまく発信できれば絶対に興味を持ってもらえるはずなのに……と悩んでいた時に、知人からマーケターの桜井貴人さんをご紹介いただきました。
桜井さんのアドバイスをもとにnoteを主媒体とした情報発信を始めたところ、社内の様子を社員である小山の目線と感性で語った文章が功を奏したのか、専門学校生や機械好きの大学生がインターンに来てくれるようになりました。
発信を始める前に比べれば、確実に弊社の名前は広まっているようです。
ただそれがビシッと採用に結びついてるかというと、まだ断言できません。目に見える成果が出るまではあと一年くらいかかるかと思います。
私が代表になってからは広報や採用以外にも、新たな仕組みをどんどん取り入れていきました。リモートワークや時間有給制、職務によっては裁量労働といった新しい働き方もその一つです。
働き方にバリエーションを!
イシダテックに長く勤めている方々は本当にタフ。
仕事が大変でも手を抜かず、作業環境がシビアでも品質の高い作業をしてくれます。プライベートより仕事優先が当たり前だと思ってる方も多い。
一方で若い人たちは、仕事を早く切り上げて遊びに行きたいとか、休日もなるべく友達と同じであってほしいとか、世代によってのギャップはたしかにあります。
どちらが良くてどちらが悪いという話ではなくて、いろいろな働き方、いろいろな性格の社員がいても私はいいと思うんですよ。
と言いますのも、弊社がリモートワークや時間有給、裁量労働制を導入した経緯に、社員の性格が深く関係しています。
たとえば、イシダテックには中原という者がいます。彼は天才的なエンジニアでありながら、諸刃の刃的性質を持つ社員なんです。
ある日、採用をサポートしてくださっている方から、「工学系トップクラスの大学にいた人が就職先を探している」と連絡を受け、急遽、東京まで口説きに行ったのが中原さんとの出会いです。
これがまた、とんでもない曲者でした。
彼が入社して間もない頃、始業時間を30分過ぎても出社してこない日がありました。痺れを切らして電話をしたら、「すみません、ちょっと遅刻します」って返事をくれたんですけど、そこからまた待てど暮らせど一向に現れない。
「もしかして今日はもう来ないのかも……」と諦めていたら、なんと16時近くに何食わぬ顔で出社してきたと思ったら、そこから退勤時間を無視してバリバリに仕事してくれました(笑)
以降も彼は度々遅刻してきては、深夜まで猛烈な勢いで仕事をしてくれました。いわゆる「夜型人間」みたいで、エンジンのかかりがとても遅かったんですね。むしろ、かかりが遅すぎてエンジンの存在を疑うこともあります。
もちろん、成果を出さずに賃金をもらう目的だったら許せませんよ。会社の代表として、業務に支障をきたす社員を放ってはおけません。
しかしながら、彼の仕事はどれも評価できる。AIの開発にしても、他の社員では代替が利かないですし、スイッチの入った時の彼のポテンシャルはすさまじい。
このように、弊社のルールである8時出勤・17時退勤の枠では真価を発揮できない社員がいるのなら、ルールのほうを変えてあげるのも一つの手なのかもしれないと考えるようになりました。
また中原さんは、言うなれば「0を1へ」の人です。
仕事のプロセスが0から10まであるとすると、普通の社員だったら土台にある1を8くらいまで進められる。ところが彼は、土台となる0を1にする工程の、もっともクリエイティブな部分を得意とします。
一方で、1から先を進めるのがとんでもなく苦手。
システムの取扱説明書を書いてほしいとお願いしても、書き出しの5文字に3時間かかってしまったこともあります。かと思えば、頼んでもいないところまでガッツリ仕事を進めてくれたり。
やることが極端なんですよね(笑)
そんな彼も生活環境が変わり、8時きっかりに出社してくれています。今では弊社のAI事業を引っ張ってくれる頼もしい存在です。
社員の長所を活かす環境づくり
中原さんにはやりきる仕事が無理とわかったので、0から1は彼に任せて、それ以降を誰かが引き継いだほうが効率がいいのでは?
そう考えた時に、最適だと思ったのが笹岡という社員です。
この中原・笹岡の二人は、夫婦漫才みたいに性格が噛み合う。中原さんが爆走して焼け野原にした土地に、笹岡さんがレンガを敷き詰めてくれるといった具合に、脅威の連携プレーを見せてくれます。
つまり、中原さんのポテンシャルはすごいけど、今あるルールの中だけでは守ってあげられなかったし、1から10を進める働き方のフレームでは本領を発揮できなかったわけです。
中原さん以外で特殊な働き方をしてる社員として、新規事業を進めるチームの藤井さんがいます。
彼はもともと東京の会社に勤めていたのですが、採用を機に静岡に引っ越してきて……くれませんでした(笑) リモートワークOKにした直後あたりに「東京の八王子に家を買いました」と報告してきたんです。一瞬、我が耳を疑いましたね。
リモートワークOKってことになっていたし、東京のほうにも弊社のお客さまはいらっしゃるので、職務柄、まあ、そういう働き方もありかなと、僕のほうが折れました。
だから、みんな現場に行ってチームで一つのものをつくるのが基準にはあるけれど、バリューが出せる人はリモートワークや裁量労働制を使ってくれてもいいという形になりましたし、それに伴い人事評価にも柔軟性を持たせました。
性格を理解した上での最適化を目指す
このように、イシダテックは他の企業に比べると、比較的ルールが柔軟なのではないかと思います。私自身が「働き方は○○であるべき」みたいな労務関係がすごく苦手だったことも影響しているかもしれません。
イシダテックの前に私が勤めていた会社は、周りは比較的若い社員が多く、積極的に新しい仕組みやルールを取り入れる柔軟性がありました。各々、独自の働き方で成果を出していましたね。
だから、嘘をついて勤務時間を長く申請するとか、仕事をしているフリをするとか、道理に反したり生産性を下げる行い以外であれば、ある程度の多様性を認めてもいいのではないかと、私は考えています。
性格とか性質って、自分ではどうにもならないところがありますよね。
たとえば、私なんかは思いつきでぽんぽん行動しちゃって、周りを置き去りにしてしまう癖があるから、保守的な人を身近に置くことで自制している節があります(笑)
「僕はどうしても午後2時にならないと出勤できないんです」とか「東京に家があるので週5日は会社に通えません」とか、しょうがないですもん。ただ、その分しっかり価値を生み出してくださいとお願いしています。
どこが苦手でどこが得意なのかっていうのはなるべく事前に把握した上で、「長所を伸ばそう」と考えるのではなく、「どうにもならないところもあるよね」と割り切った上で、能力を活かせるような采配を意識しているつもりです。
暗黙のルールに頼らない
ルールに関して、最近気がついたことがあります。それは言語化の大切さです。
仕事が立て込んでいない時って、どうしてもダラダラしちゃうんですよね。移動速度も遅くなってしまう。できれば、そこも社員としての自覚を持って、チャキチャキ歩いてほしいし、意識して仕事に取り組んでほしい。貴重な時間を無駄にしてほしくない。
ただ、「これくらい当然わかってくれるだろう」と社員の想像力に頼って伝える努力を怠るのも、ちょっと違う気がします。
私だって明文化されていないルールを守るのは苦手です。「○○しなきゃな」と頭で考えていても、なかなか行動に移せなかったりします。
書き初めで新年の抱負を書くのと似ていて、それを文字にして目のつくところに置いておく必要性を感じました。だから就業規則とはべつに、「我々はこうであるべき」みたいなルールブックをつくろうかなと。
イシダテックに代々伝わるルールはあったんですけど、アップデートされてきませんでした。現代にそぐわない文体で書かれており、いかようにも解釈できてしまう。
昔の会社のように、みんな地元の人間で、バックグラウンドの同じような人たちで構成されていた組織なら、それで通用したかもしれません。
しかし、全国から人が集まり、年代もばらつきがある組織では、もうちょっとしっかり定義してあげないと解釈がすれ違ってしまう。暗黙のルールに頼って関係がギスギスしては仕事効率も落ちてしまいますよね。
規則でガチガチに固めてしまうのはいかがかと思いますが、「自由の中にもルールはあるよな」と思い始めた今日この頃です。
就活は社長に直接アタックしてもいい
採用活動のことに話を戻しますと、今の就活ってリクルートサイトや就職エージェントに登録するのが一般的ですよね。
でも私が思うに、就職希望者と経営者がダイレクトに繋がれる仕組みがあってもいいと思うんです。
会社が「人」でできている以上、優秀な人材を採用しない理由はないわけで、こちらとしては24時間365日、いつでも採用の準備は万端です。
だから、自分のことを書いた紙やポートフォリオを持参して会社に突撃されても、少なくとも私は悪い気がしないです。
社長へのダイレクトアタックはやる気の表れだと思いますし、「御社で働きたいです!」みたいに社長個人のSNSにメッセージを送ってみるとか、行きつけの居酒屋を見つけてアタックしてみるとか、どんどんやってほしいですね。
つまり何が言いたいかというと、「我こそは!」という方は、ぜひ私にアタックしに来てください!
後編へ続く
そろそろ隣の会議室に移動しましょうか。社員たちに何を言われるかドキドキします(笑)
本当は全社員についてお話ししたかったですが、さすがに時間が足りないですね。イシダテックの個性的な社員たちについてもっと知りたい方は、ぜひ弊社のnoteをご覧ください。
——後編では社員を交えての座談会になります。社員から社長へ、容赦のないダメ出しが飛び出しました。
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