2026.01.30

富士山静岡工場が挑むブッセ大量生産の軌跡|株式会社シュクレイ インタビュー

株式会社シュクレイ

株式会社シュクレイ 富士山静岡工場
第三生産部 富士山静岡工場 部長 坂本悦史さん
第三生産部 富士山静岡工場 ケーキライン サブリーダー 小池しおんさん

13メートルのトンネルオーブンで焼くブッセ

坂本さん

株式会社シュクレイは、土産菓子の企画・製造・販売までを一貫して手がける会社です。「お菓子の総合プロデューサー」を掲げ、関東圏の空港や駅、百貨店を中心に、ギフト需要の高いスイーツを提供していおり、静岡県内でも、新東名高速道路のサービスエリアなどに商品を置かせてもらっています。

令和7年度に「ブッセ大量生産環境構築」の取り組みにより、静岡市中小企業技術表彰を受賞しました。

ブッセとは、ふんわりとした生地でクリームやジャムを挟んだ焼菓子です。これまではグループ会社から仕入れていましたが、2024年、富士山静岡工場の新設を機に自社製造へと切り替えました。

せっかく自社で製造するのであれば、より美味しいブッセを、より多くのお客さまに届けられる環境を整えたいという想いから我々の挑戦が始まりました。

挑戦と失敗の毎日

坂本さん

富士山静岡工場では「ブッセをトンネルオーブンで焼く」という新方式を導入しました。トンネルオーブンとは、ベルトコンベアに生地を乗せて連続的に焼成していく設備のことです。これまで固定式のオーブンで焼いていたブッセを、全長13メートルのトンネルオーブンで一度に大量に焼こうと思ったんです。

ただ、現実はそう簡単ではありませんでした。

小池さん

まさに毎日が挑戦でした。当社のブッセは固定式オーブンでの焼成を前提として開発された商品だったので、トンネルオーブンでは同じように仕上がりません。当初は生地がうまく膨らまず、ぺちゃんこのものが大量に出てきました。

状況が劇的に一気に改善することはなく、すべての要素が揃うまでに長い時間がかかりました。オーブンの設定を見直すだけでなく、焼き時間を変えたり、ミキサーのホイッパーの本数を変えたり、本当に三歩進んで二歩下がるような日々を繰り返しました。機械メーカーの方々にもたくさん無理を言ったと思います。

味が安定して再現できるようになってからは、次の課題として「数をつくる」挑戦が始まりました。生産性を高めるために工程を何度も見直しました。そうして、当初は1日7,500個が限界だった生産数を15,000個まで引き上げることに成功しました。

静岡の人たちと創り上げる工場

坂本さん

開発と並んで大変だったのが、静岡での従業員集めです。

静岡の地で、静岡の人たちと一緒に工場をつくり上げていくことは、私たちにとって大きな目標の一つでした。工場の立ち上げまでに400人以上の方と面接を行いました。苦労も多かったですが、同時にやりがいと楽しさも感じていました。

募集にあたっては「未経験大歓迎」を掲げ、パティシエの資格や専門的な経験がなくても活躍できる環境を整えました。また、そうした方々に安心して働いてもらうため、文化面の共有はもちろん、技術面についてもベテラン社員が一人ひとりに寄り添いながら丁寧に指導を行いました。

その結果、比較的早い段階で職場に馴染み、現場としても安定した体制を築くことができたと感じています。

採用につながる取り組みとして、現在は静岡県内の大学や高校とも連携を進めています。たとえば、高校生が実際に商品開発に取り組むプロジェクトも進んでいます。

行政の方々も非常に協力的ですし、静岡県内の多くの企業とも交流の機会をいただいています。ありがたいことに、皆さん温かく迎えてくださり、「うちの施設のお土産を一緒に開発してほしい」といった声も数多くいただいています。工場に足を運んでくださった難波市長からも「ぜひ静岡の銘菓をつくってほしい」とお言葉をいただきました。

地域の方々に期待していただき、大きな励みになっています。静岡に根ざした工場として、これからも地域と共に歩んでいきたいと考えています。

超現場主義で現場の声を素早く形に

坂本さん

私はシュクレイに入社する前に製造業の会社を二社経験していますが、取締役が汗だくになりながら現場で機械を操作する会社はシュクレイが初めてです。

というのも、当社の最大の特徴は「超現場主義」にあります。他社に負けないほど現場の声を重視することが私たちのポリシーです。幹部社員は現場のために存在していると考えており、現場から「こうしたい」「ここを改善したい」と声が上がれば、スピード感をもって形にしていく姿勢を大切にしています。

そのため、日頃から現場とのコミュニケーションを欠かしません。役職に関係なく社員同士の距離が近く、意見を言いやすい風土が根づいています。そうした環境が現場発の改善や挑戦を生み出し、結果としてものづくりの質を高めていると感じています。

喜びを創り喜びを提供するシュクレイ

小池さん

当社の企業理念は「喜びを創り喜びを提供する」です。食べてくださった方々が幸せな気持ちになり、自然と笑顔になってもらえるような商品をつくり続けていきたいと考えています。

その「喜び」はお客さまだけでなく、つくる側にもあってほしいです。同じ目標に向かって、楽しく前向きに仕事のできる仲間たちを静岡の地で増やしていければ嬉しいです。

坂本さん

この工場を建てたとき、「気軽に訪れられる工場見学コースをつくれたらいいな」という夢がありました。まだ実現には至っていませんが、私たちなりのやり方で、工場を身近に感じてもらえる取り組みを考えています。

たとえば、働く仲間の家族を招く「ファミリーデー」を実施したりして、地域の人ともつながりながら楽しく働ける工場にしていければと思います。

※本記事の内容は2025年11月時点の情報です。

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