2025.07.02

キャリアの循環する地域社会へ|合同会社ナレッジ・ストック 渡辺早紀代表社員インタビュー

私たちが目指すのはキャリアの循環する地域社会です。

——そう語るのは、総務や経理管理の代行から業務改善やDX化まで幅広く支援する合同会社ナレッジ・ストック代表社員 渡辺早紀さんです。

同社は、現場目線での丁寧なサポートを強みとし、地域企業の成長を支える伴走型のパートナーとして活動しています。

渡辺さんは、どのような課題を解決するために事業をスタートさせたのでしょうか。また、ナレッジ・ストックが描く「キャリアの循環する地域社会」とは、どのような姿なのでしょうか。

ナレッジ・ストックの公式サイトはこちら

業務改善で人員不足解消を目指す

事業を法人化したのは2021年5月。ちょうどコロナ禍のピークが過ぎたあたりです。そのころ、国内旅行が活性化していく流れがあったものの、蓋を開けてみたら、宿泊施設では人が足りず、業務が回らないという問題が多発していました。

それは宿泊施設だけでなく、飲食店のようなマンパワーの欠かせない業界も同じです。コロナ禍前から人員不足の兆候はあったものの、それが顕著になり、業務の遂行がますます難しくなっていました。

現場を回す人は足りなくても、相変わらず経理事務や顧客管理業務は行わないといけません。

だったら、その事務業務を効率化できれば、現場のサービスに人員を割けるのではないかと考え、ナレッジ・ストックを設立しました。

地域の困り事を解決したい

弊社の業務は、企業の顧客管理や総務・経理業務、DX化を通じた業務改善サポートを行う会社です。また、企業が抱える負担の大きい業務の一部をアウトソーシングで請け負うこともしています。

たとえば、以前お手伝いさせていただいた旅館では、事務作業のアウトソーシングにより、月120時間ほどの業務時間削減につながりました。月120時間と言えば、従業員一人のほぼ一か月分の労働時間にあたります。その分を現場での作業に回すことで、サービスの質の向上に役立てていただけました。

やっていることは業務改善と事務のアウトソーシングですが、私たちが本当にやりたいことは、企業と一緒に困り事を掘り下げ、伴走することです。さらにその先には、サービスを通して地域の困り事を解決したいという想いがあります。

自分ができるのはここまでか……

事業の出発点には、かつて感じた悔しさがあります。

私の出身は静岡市です。静岡の大学を卒業後、就職のタイミングで上京しました。就職したのは大手保険会社です。そこでは法人相手に営業をやっており、今のようにさまざまな企業の方々に会う機会がありました。

ただ、悩みのバリエーションの多さに反して、こちらが提供できる解決策は保険商品だけです。お金やリスクへのサポートはできても、それだけでは解決できない悩みもたくさんありました。

「自分ができるのはここまでか……」と、悔しいような、寂しいような気持ちになることもしばしば。そんな経験を重ねるうちに、保険という枠にとらわれず、もっと幅広い方法で企業や地域の課題に寄り添えないだろうか、と思うようになっていきました。

その後、独立を決意して保険会社を退職、静岡県東部に移り住みました。そこで、多角的なアプローチによって自治体や企業の悩みを解決するフリーランスとして働き始めました。

内容としては地方自治体から依頼された移住・定住や婚活施策、人材育成研修事業などさまざまでした。ただ、どの事業においても出発点は必ずお客さまへの丁寧なヒアリングから始まります。なぜなら、最初から課題が明確になっていることは稀で、自分たちが抱える問題点を自覚していないことも多いからです。

そのため、課題の本質を引き出し、見えにくい問題点を明確にすることが重要です。こうしたプロセスは法人化してからも変わらず行っていたため、早い段階で人員不足の課題に気づくことができたんです。

どんなことでも実現できそう

この仕事をしていて私がもっと嬉しく感じるのは、企業さまが業務改善を通じて、自社の新たな可能性に気づかれた瞬間です。

たとえば、昔ながらの方法で顧客管理や経理業務を行っていた企業のお手伝いをさせていただいた時のことです。担当者の方と一緒に業務フローの変更作業を行いました。

業務フローの変更は無事に完了しましたが、その後、担当者さまから「このような業務改善が自社でできるとは思いませんでした。これもナレッジ・ストックさんのおかげです。ナレッジ・ストックさんとなら、どんなことでも実現できそうな気がします」とお言葉をいただきました。

そのような成功体験を企業と一緒に築いていけることが何よりの喜びです。

過去の取り組みに敬意を払う

業務改善のお手伝いをさせていただく際に気をつけていることは、担当者の方々の過去の取り組みに敬意を払うことです。

たとえば、経理業務一つとっても、長年担当されてきた方には、独自のノウハウや経験が蓄積されています。その中にはもちろん、その方なりの業務改善が含まれています。きっと、大変な思いもされてきたでしょう。

そんな経緯のある方々に、「効率が悪いですよ」と言うのは失礼に当たります。また、最大の課題を知っているのは、日々業務に向き合っているご本人であることも間違いありません。

ですので、まずは担当者の方にしっかりと敬意を払うこと。そのうえで「こうするともっと良くなりませんか?」と提案させていただくことを常に意識しています。

ビジネスの基本は「誰かのため」

昔から「誰かのために何かしたい」という想いは強く持っていました。その根底には「自分だったら何かしてあげられるはずだ」という根拠のない思い込みがあるのだと考えます。

会社員として経験を重ね、できることが少しずつ増える中で、その気持ちはより強く、具体的になっていきました。誰かの役に立てたという実感が、自分自身を前に進める力になっていたんです。

この「誰かのために」というのは、ビジネスにおいて欠かせない考え方だと思っています。

自分たちの提供する商品やサービスが、相手の役に立ち、喜ばれることで初めて価値が生まれます。そのため、相手のニーズや期待に真摯に向き合い、喜びを創り出すことがビジネスの根幹と言えるでしょう。

結局それは、お客さまに対して「いかに価値提供できるか」につながっていきます。そこに対する共感は、社内には絶対にあってほしいと思います。

経済の中心には人がある

地元や地域を意識するようになったのは、フリーランスの仕事を始めてからです。ただ、どちらかというと「静岡」というマクロの視点より、そこにある中小企業や働く人たちというミクロの視点から地域を見ている印象があります。

私なりの「まちづくり」には中小企業が欠かせません。

地元の経済を回すのは、やはり地元の中小企業であり、その企業がちゃんと稼げる体制をつくることが、静岡というまちの活性化につながると考えます。

また、さらに視野を広げると、そこには人の存在があります。一般的に経営資源の3つの柱は「ヒト・モノ・カネ(人的資源・物的資源・財務資源)」といわれていますが、大局的に見れば、モノを生み出すのもカネを生み出すのもヒトなんです。

人がいなければ会社は動かないし、経済は生きない。コロナ禍以降の人材不足に触れて、より強く感じるようになりました。

キャリアの循環をつくりたい

私たちの目指す先には、キャリアの循環する地域社会があります。キャリアの循環とは、地域や組織内で人材がスキルや経験を積みながら移動し、成長していく仕組みのことです。

たとえば女性の場合、結婚・出産・子育てなどライフステージに合わせて働き方が変わりやすい傾向にあります。子育ての間は残業や土日出勤ができなかったり、仕事の制限ができてしまうものです。たとえば、本人は「サービス業がしたい」と思っていても、そのような制約の関係で諦めざるをえないことも多々あります。

そういった方々が、お子さんが成長して時間に余裕ができてきたタイミングなどで、相性の良さそうな企業に入社できるような仕組みをつくっていきたいと考えています。

とくにナレッジ・ストックは、多くの企業さまと深いお付き合いをさせていただいており、自然と「仕事を探している人」と「人材を求めている企業」双方の情報が集まってきます。そうしたネットワークや情報を活かし、キャリアの循環を支える一端を担うことができればと考えております。

そのためには、働く側にもキャリアを考える機会が必要だと考えます。自身のキャリア適性やビジョン、ライフワークバランスについて考えることで、それが結果的に、企業や地域全体の成長にもつながるはずです。

そう考えて現在、半年に一回くらいのペースでキャリアワークショップを開催しています。キャリアに悩まれている方がいらっしゃいましたら、ぜひご参加ください。

キャリアワークショップの様子

過去のイベントはこちら

仕事の規模感を選べる静岡

静岡県には多様な産業が根付いています。お茶やみかんなどの農業、マグロやサクラエビなどの水産業、自動車や楽器といった製造業まで、産業のバリエーションが豊かです。

また、静岡県は地域ごとに得意とする産業の種類が異なることも特徴です。たとえば、県西部ではものづくり、県東部では水産業や観光業が盛んです。これは、ある程度の人口規模を持つ地方都市ならではの特色ではないでしょうか。

また、静岡県の企業は、地元向けのビジネスに留まらず、首都圏や海外をターゲットにした事業展開を行っている企業も無数にあります。

地域に根ざしながら規模やフィールドを問わず、多様な仕事に挑戦できるのは、静岡ならではだと考えます。

静岡は多彩な産業があって、いろんなチャレンジができる魅力的なまちです。

私たちは静岡の活力をさらに引き出し、地域の発展に貢献していきたいと考えています。

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