2022.08.24
社長になって最初にやったのは○○でした | フジ物産 山﨑社長インタビュー
静岡みんなの広報は、アスリートのセカンドキャリア支援事業「Ath-up」をスタートしたフジ物産にインタビューをしました。
石油製品の販売や漁業用餌料の販売、鰻の養殖・加工事業など、多角的に事業を展開するフジ物産ですが、山﨑社長はどんなところに気を遣いながら会社を経営しているのでしょうか?
どんな組織も個人の集まり
フジ物産は父がつくった会社です。私の人生の中でフジ物産の社長になるということは一切計画に組み込まれていませんでした。ところが紆余曲折あって、急遽、社長になることが決まりました。
先代の社長から会社を引き継いで私が最初にやったのは、社員全員と一対一で対話することでした。公私関係なく日々感じている不安や不満など、何でもいいから話してほしいと、一人30分ずつヒアリングをしました。
コロナ禍になるまでの何年かは、「役員に物申す」というテーマで食事会もおこなっていました。毎年一回、各部署の拠点に赴いた役員に向かって、普段言えないことを社員に言ってもらうのです。
中にはメモを用意してまで意見を言ってくれる社員もいるんですよ。ここ数年開催できていないので、課題が蓄積されてきている感じもします。「役員に物申す」も社員のガス抜きになっていたと思います。
どんな組織も個人の集まりです。組織や会社って大きな塊のように言うけれど、やはり一人ひとりの想いは軽視できません。
「みんなで集まってこれをやろうぜ!」と口では言っていても、頭の中を覗いてみたら「全然やりたくない」と思ってる人はいるものです。そこを丁寧にすくい取って、想いをすり合わせるのが大切なんです。
株式会社ディー・エヌ・エー会長の南場智子さんも同じようなことを言っていましたね。
もしかしたら、女性ならではの視点というのもあるかもしれません。経営に関しては男も女もないと思っているので、自分ではあまり自覚はないんですが、「社員に焦点を当てる」というか、社員一人ひとりとの関係を大事にしているというのはあります。
女性の方が共感力があると言われますよね。共感というのは「興味を持っている」「関心を持っている」ことの証だと思うんです。「あの人は自分に興味を持ってくれているんだな」というところから信頼関係が生まれることはあると思います。
仕事は利他の心で
ベンチャー企業のようなフットワークの軽さは、間違いなく父の代から引き継いだものです。弊社は「おもしろいものはやってみよう」の精神の下に、積極的に新しい事業を展開してきました。
フジ物産はガソリン燃料の取引からスタートしましたが、私が入った時にはすでに多角化されていました。多角経営というところにフジ物産の土台があるように感じています。
また私が思うに、失敗を恐れないマインドで新規事業にチャレンジできるようになったのは、スポーツや地域貢献に力を入れ始めたことも関係しているように感じます。
地域貢献によって社会との関わりを持つことで、社員のみなさんの気持ちも変わったように思うのです。
やはり誰かのために何かをするというのは、人間の至上の喜びではないかと思うのです。社員のみなさんも誰かに喜んでもらえているとわかると良い顔をしますね。
「仕事を通して社会に貢献しているんだな」という視点を持つだけで仕事に対する心意気が変わります。「美味しいものを食べたり、素敵な洋服を着るより、誰かの役に立っていると思える瞬間が一番幸せだ」と思う方も多いのではないでしょうか。
いわゆる「利他」の心ですね。どうせ働くなら、それが実現できる会社を選んだ方がいい。それが自分の得意な分野と結びついたら、「いい人生だったな」と思えるはずですよ。このことはインターンシップの学生さんにも必ずお伝えしています。
「誰かのために」は江﨑グループの江﨑社長も同じことおっしゃっていましたね。江﨑社長とは経営者の勉強会「盛和塾」でともに学ぶ機会をいただきました。そこでビジネスにおいてこそ「利他」の精神が大事だと教えていただき、私はとても経営が楽になりました。
「利潤のためなら何をやってもいい」という考えは過去のものになり、利他を経営のベースにする経営者が増えているように感じます。とてもいいことですよね。
▼江﨑社長インタビュー記事はこちら▼
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チャレンジを恐れない
マイナーチェンジのようなものでもいいから、とにかくチャレンジする姿勢を忘れないようにと、社員には伝えています。
新しいことをやらないと企業として生き残れないというのは、ビジネスにおいて常識ですよね。大切なものをきちんと残しつつ新しい事にチャレンジする。とても大切なことだと思います。
フジ物産はガソリンスタンド、マグロ漁業、ウナギの流通など、複数の事業を持っていますが、たとえばウナギ事業は外部環境の変化が激しい業界です。
ウナギの稚魚は天然のものを使わざるをえないので、人間がコントロールできないのです。採れない時は、もうどうしようもない。ウナギ事業としては赤字になってしまいます。
ウナギ事業にかぎらず、環境や社会情勢の変化などのコントロールできない理由で、事業が立ち行かなくなってしまうことは往々にしてあります。
そんな中でも、フジ物産全体が赤字にならないのは他の事業が補ってくれるからなんですね。あらゆる事業部門でそれを経験しているから、社員全員がお互いに支え合っているというのを知っています。
世の中は変わり続けています。ずっと今の良い状況が続くとは思わず、チャレンジ精神と危機感を持って、フジ物産という共同体を前に進めていかなければいけませんね。
社員から広まったボランティアの精神
経営者がサッカー好きだからサッカーチームのスポンサーをしているという例はよく耳にしますが、私自身が特定のスポーツに固執していないからこそ、さまざまなチームのスポンサーをしているというのはあるかもしれませんね。
スポンサーにかぎりませんが、会社として投資する先が本当に価値のあるものなのか見極めないといけません。清水エスパルスのスポンサーも本当に小さな金額から慎重にはじめました。ベルテックス静岡や静岡ブルーレヴズも、事業が安定してきた歴史とともにスポンサーをさせてもらっています。
ベルテックスの試合があると、社員が自ら率先してゲーム前後のお手伝いをおこなっています。社員がスタッフや選手のみなさんと親しくなることで、ベルテックスとフジ物産の関係がより深まりました。経営者として誇らしく、また、ありがたく思います。
ここ何年かは清水エスパルスとともに、ボランティアで小学校の出前授業もやっています。
会社が指示をしているわけではまったくなくて、お声がかかると社員が喜んでお手伝いに行くんですよ。そういうところから、地域貢献やボランティアの文化が会社に根付いたというのはあるかもしれません。
ボランティアといえば、絵本を幼稚園にプレゼントしています。
フジ物産は遠洋マグロ漁業にも関わっており、マグロで清水を元気にしたいという気持ちがあります。
そんな清水のマグロ漁業を子どもたちに伝えたいと思い、会社設立60周年記念でつくりました。毎年、清水区の新入園児にプレゼントしているんです。
清水をはじめ、ケープタウン、ラスパルマス、ジャカルタにもフジ物産の事務所があります。これは漁船の燃料や餌を補給するためです。こうしている間にも、弊社と取引させてもらっている100隻以上の漁船が世界の海のどこかでマグロを捕っているのです。
想像してください。時期になるとケープタウンの港に日本のマグロ船がずらっと並んでいるんですよ。すごい光景だと思いませんか。その船たちが積んだマグロが清水港に降ろされるんですよ。
清水はマグロを通じて世界と繋がっているんです。このことをもっと地元の人々に伝えていきたい。絵本をつくったのも、これがフジ物産にしかできない地域貢献の一つだと思ったからです。
もともと地域貢献をやろうと思ってやっていたわけではありません。会社はきちんと利益を出して、納税することが社会への一番の貢献なんですね。地域貢献はそれからでなければできません。
ある程度利益が安定してきたら、もう少し目に見える形で地域貢献っていうのもやっていいかなと思ってスポーツクラブへの協賛や絵本の活動を始めました。目に見える形で地域貢献をすると社員のモチベーションが上がりますし、弊社のことを地域の方々に知ってもらう機会も増えますからね。
若い人へのメッセージ
自分の軸となる価値観みたいなものは、しっかりと把握しておいたほうがいいと思います。人それぞれ違いますよね。リーダーシップを発揮して組織で結果を出したいとか、チャレンジ精神のもとに新しいことをしたいとか、研究肌とか、あるいは社会貢献をしたいとか、大切にしている価値観は十人十色です。
その価値観が自分の所属する会社やコミュニティーと合致するか、あるいは発揮できているかどうかを知っておくのは大切です。価値観がすれ違うとその場に居づらくなってしまいますし、能力が存分に発揮できないと思うのです。
「価値観」「欲求」「コアコンピタンス(能力)」の三つの指標をキャリアアンカーと言います。
アンカーとは船の錨のことですね。人生を航海に例えた場合、このキャリアアンカーが波に流されて迷子になってしまうのを防いでくれます。
自身のキャリアアンカーをしっかりと把握し、価値観を軸に自分の進むべき道を意識的に選んでいくというのは大事です。キャリアアンカーについてはアセスメントツールで簡単に調べられるので、時間があったらやってみることをおすすめします。
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