2022.05.25
これから蒲原、一気に変わるから | スルガノホールディングス株式会社栗山勝訓社長インタビュー
「これから蒲原、一気に変わるから」
そう楽しそうに語るのは、スルガノホールディングス株式会社代表取締役CEOの栗山勝訓社長です。
栗山社長は、静岡市の東に位置する蒲原(かんばら)地区で2022年7月にオープンしたアウトドア施設「トライアルパーク蒲原」の仕掛け人です。
(取材先)スルガノホールディングス株式会社【公式ホームページ】
今回、静岡みんなの広報編集部は栗山さんに施設オープンまでの経緯や蒲原への想いを伺いました。
社長である父親からの会社解散宣言
事業の出発点となった駿河重機建設株式会社は今年で62年目になります。社長を引き継いだのは、僕が32歳の時でした。
当時、東日本大震災が起きたばかりで建設業界がどん底だったころ。社長である父親が「このままでは会社を続けられない。会社を解散する」と言い始めたんです。
その頃、僕は専務だったけど、社員を抱える中で「解散できるわけないだろ!」と言って親父と大喧嘩してしまって。「社長、専務、やめてください!」って社員に止めに入られるくらいの喧嘩に発展して、なかば父親から奪い取るような形で、その年の6月に社長になりました。
ただ、いざ自分が社長になってどうしようかと悩みましたよ(笑)。今だから言えますが、めちゃくちゃ赤字で債務超過の状態。金融機関からよくそっぽ向かれなかったですよね。
まずは会社の立て直しをしなければと思い、当時所属していた静岡青年会議所の組織体制を参考にさせてもらいました。静岡青年会議所には優れた経営者の先輩がたくさんいたので、学びも多かったですね。
今となっては当たり前なんですが、予算・決算主義を導入し、中期・長期の計画を考えて会社の体制をガラリと変えました。
青年会議所の活動を通して、考え方も変わってきましたね。それまでは「赤字の会社をどうにかしなくちゃ」とだけ考えていましたが、利他の心を学んでまちづくりを考えるようになってから、チームの一体感をすごく感じるようになりました。みんなも「世のため人のため」ってなってくれたんです。結果、3年で経営状況が上向きになりました。
駿河重機が事業の基盤としてしっかりしてからは、「このまちにないものをつくろう」という想いが強くなっていきました。それが僕の起業家としてのスタートです。
母校の生徒数が激減。これはヤバイ!
ちょうどその頃、娘が小学校に入学して保護者として久しぶりに母校の様子を見に行ったんです。そうしたら、一学年が35人程度しかいないのです。まちの子どもが激減していて「正直、ヤバい」と思いました。
若い人たちが移住について相談できる窓口が必要だと考えました。そこからさらに、蒲原を住みたくなるまちに変えるには不動産会社が欠かせないと思って、まずは「株式会社さくら不動産」を立ち上げました。そもそも、地域に不動産会社がありませんでした。蒲原は桜エビの産地として有名だったのと、桜の名所として知られる御殿山があったので〝さくら〟不動産という名前に決めました。
地元の高校が廃校に
今から10年ぐらい前、2013年に地元にあった庵原高校が廃校になってしまいました。蒲原と由比に立っていた教育機関がなくなったのがすごく嫌でした。だから将来、この跡地でインターナショナルスクールとか、教育をやろうと考えるようになりました。
ちょうどその時、庵原高校のグラウンド8600坪が入札で売りに出ていたんです。すごい金額になってしまったけど、駿河重機の業績もそこそこ良くなっていたので、買わせてもうらことができました。
ただ、グラウンドの砂利採取という仕事がありまして、地下の砂利を採ってその土地の跡地利用を考えているうちに、教育以外の事も考えるようになっていっていきました。
子どもたちの将来をつくるなら教育は重要だけど、「まちづくり」を考えると特定の世代だけではなく、あらゆる世代のことを考えないといけない。そのためには、蒲原の人たちにとって教育機関より重要なものがあるのでは? と考えるようになりました。
この蒲原エリアに一番意味のあるモノをつくろうと決めました。それで蒲原が良くなる。静岡市が良くなる。隣の富士市、富士宮市も巻き込んで静岡県全体が良くなる。さらに、全国で真似するところが出てきて、日本全体が良くなる。
そんな構想が「トライアルパーク蒲原」の始まりです。
いざトライアルパーク構想へ!
新規事業として行政に道の駅を提案して、「これからだ!」というタイミングでコロナがきてしまいました。とてもじゃないけど、国に話を持ちかけられる状態ではありませんでした。本当は8600坪すべての土地を有効活用する道の駅の構想だったんです。
そこで土地の半分を使って、今後できるであろう道の駅の方向性を見出していく施策を考えました。こうして、道の駅の前段階として「トライアル・サウンディング」という手法を用いた「トライアルパーク構想」ができました。
トライアルなパークだから、簡単に言うと「とりあえずやってみる公園」ですね。
テストマーケティングの地「静岡」を再び
知っている人も多いと思いますが、静岡はテストマーケティングですごく使われる土地だったんです。たとえば、お菓子の新商品を正式に発売する前に、まず静岡で無料配布してみて「おいしい」「まずい」の反応をうかがってみる。「まずい」という反応が多いと、発売をやめるみたいなテスト販売が盛んでした。
今回、なんの偶然かわからないけど、公園としてトライアル・サウンディング手法を用いるのは、日本全国で静岡が一例目。
行政の持っている土地を活用して、移動型本屋さんや移動型結婚式場、グランピングとかはあったけど、公園としての「トライアルパーク」は初めてです。
率直に言って、何もやらなければただの芝生の広場なんです。遊具の事故で芝生だけになっちゃった公園って多いですよね。そんな場所もトライアル・サウンディングを用いることで、あらゆる事業者がチャレンジできるようになります。
キッチンカーを誘致するのもありだけど、今まで想像できなかったようなものだってやりたいし、やってほしいです。たとえば、岩を置いて片輪上がっているアウトドア車の展示会なんかいいですよね。坂になっているところにも車を展示できるのはアウトドアのトライアルパークだけです。
車に試乗してからパーク内でコーヒーが飲めたりしてね。「ディーラーに行けばノベルティグッズプレゼント」とかになったら、お互いWIN – WINですよ。
アウトドアってところがポイントです。たとえば焼肉屋さん。コロナでお客さんが減ってるのでコストを抑えて、牛肉を鶏肉に変えて……みたいにいろいろ頑張っていたりするけど、なんだかんだハコから出ることがない。
建物の中でしかできないって固定観念があると思うんです。「じゃあアウトドアでやってみよう」って、BBQでお肉を提供してみたり。駅のコンコースのように人が流れてしまう場所でやっていたお店も、アウトドアでやってみるのもいいですね。「最初は三ヶ月お試しでやって、うまくいったらずっと」みたいな使い方でいいんですよ。
想像できない、面白いものをつねにやっていたいですね。なので、今の段階ではどんなものになるかちょっとわからない。それがトライアルパークです。
民間から行政も巻き込む
今回、トライアル・サウンディング方式を提案してくれたのは公共R不動産です。彼らと静岡市が繋がった時に、心を動かしたのも「静岡はテストマーケティングに最適だから」という理由だったかもしれません。
この構想を思いついた時、公共R不動産はすでに全国で超人気で、みんなから引っ張りだこ状態でした。ちょうど東京で公共R不動産のセミナーがあったので、僕は静岡市役所の方と一緒にエントリーしたんです。その時、参加者が80組くらいで、みんなほとんど行政関係者でした。〇〇県、〇〇市の役所の人とか。その中で公共R不動産が支援できるのは3組ぐらい。それほど人気でした。
行政の参加者が多い中、僕だけ民間の名刺を持って、「今、静岡市がおもしろいので一緒にやりましょう!」って提案しました。行政関係者ばかりの中で、相当目立っていたらしいです。
公共R不動産が静岡市に興味を持ってくださったので、「公共R不動産が静岡市とやりたいと言ってくれてるんだから、動かないと後悔しますよ!」って持ちかけたんです。そうしたら静岡市もこの計画に柔軟に応じていただき、「いいね、それやってみよう!」って採用になりました。「前例がないからできません!」にならなくてよかったですよ。
これから、蒲原一気に変わるから。
秋ぐらいにいろいろなものがリリースされます。たとえば、新蒲原に「スルガノヴィレッジ」という構想があります。パン屋とかケーキ屋とかを入口に置いて、奥に入るとビールの醸造所。そこでつくったビールを飲み歩きながら見られる施設にする予定です。
さらに、施設を抜けた先が蒲原宿なんです。出口には出来たてのビールが飲める簡単なタップルームと呼ばれる工場内バーを設けたり、片手で食べれるものを販売して、飲み食いしながら蒲原を散策してもらいます。
蒲原地区って魅力がいっぱいあるのに、あんまり知られていないんですよね。なので散策して知ってもらいたいわけです。自転車でのまちづくりもありだけど、ビールを飲んだら宿泊ですよ。
今はホテルがないのでつくらないといけません。古民家の再生もかねて、民泊をまちのいたるところにつくりたい。すでに解体されそうだった民家を買い取って、リフォームをはじめています。秋ぐらいにはリリースできるかな。
トライアルパークに来たお客様が、蒲原宿のエリアまで周遊してもらうためのゲートウエイをつくって、遊んで散策してもらって、なんなら泊まってもらいたいですね。
民泊のもう一つの良さは、住みたければ翌日から住めるところですね。オシャレでモダンな古民家に泊まってもらって、「すごいね、ここ!」と思ったらすぐに買って住めるんです。なんと言ったって、窓口には不動産会社がありますので(笑)。うまくいけば、全国に同じ例ができるんですよ。
不動産会社が怖いのは、売れなくて固定資産税だけ払う不動産の存在です。いわゆる空洞とか塩漬けと言われているものです。それが、遊んでもらって宿泊してもらって、旅行者が気に入ったらすぐに買えるようになるんです。新しい形の内見ですね。これは不動産業界の救済にもなるし、空き家対策にもなる。人口減少への救済にもなるでしょう。
このコンセプトは全国どこでも使えます。だから、このまちづくりを真似されるものにしたい。「蒲原モデル」って名前をつけて流行らせたい。自分たちだけが良くなるんのではなく、日本全体を良くしたいので、どんどん真似してほしい。日本がどうなっていくかわからなくなっている時代だからこそ、未来への責任は我々の世代にあるんじゃないかと考えています。
この「蒲原モデル」をほかのまち、ほかの国に真似してもらえるくらいすごいものにしていこうぜって、仲間たちと盛り上がっています。こんなことできるのもみんなのおかげです。
すごいのは年齢が近い仲間たち。みんな頑張ってくれています。最初は頼りなくても、一緒にやっていくうちにみんな成長してきて、会社の成績もどんどんよくなっています。いずれ、その集合でまちも良くなっていくんじゃないでしょうか。
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