2022.06.01

ポテンシャルって言葉がネガティブですよ | スルガノホールディングス株式会社栗山勝訓社長インタビュー

今回、静岡みんなの広報編集部は、スルガノホールディングス株式会社代表取締役CEO栗山勝訓社長に「トライアルパーク蒲原」オープンまでの経緯や蒲原への想いを伺いました。

▼前編はこちら

 これから蒲原、一気に変わるから | スルガノホールディングス株式会社栗山勝訓社長インタビュー

田舎だから、まだまだ無限にできる。

地方でも都市部は、キャンバスにすれば黒に近いグレーだと思います。すでにコンテンツが詰まっているので描き入れる余裕がない。色をのせてもつかないんです。でも、蒲原は良い意味で田舎なので白に近いグレーだと思います。まだまだ描き入れる余白、余裕があるんですよね。だから、僕たちが絵を描けば、色がのるんです。それが蒲原にこだわる理由の一つですね。

あとは蒲原には、15年前に静岡市に吸収合併されたことをネガティブに考えている人もいるんですよね。でも、僕たちからすると「政令指定都市の静岡にある蒲原ですよ」って言えるのです。すごくポジティブなんですよ。だけど、吸収合併されて「このまちは終わりだな」って悲観的になってる人もいる。そうじゃないよって。政令指定都市の静岡の東にある蒲原は、静岡を維持していくための重要な位置にあるといえるんです。まさに玄関。玄関がきれいになれば入りたいって思うじゃないですか。

だから、それを蒲原住民として責任もってやらないといけません。とくに法人は責任を持たないと。僕らの会社は不動産を持っているので、キャンバスを整える役割があるんです。

静岡市の東の玄関口、蒲原。

社員の中には首都圏で仕事するのが嫌になったり、子育てに悩んで移住してきた人が多いです。そんなふうに働き方に悩んだ時に地方を見たら、静岡に移住したくなる気持ちもわかります。静岡って気候もいいし住みやすいじゃないですか。で、この辺りでこんな尖った会社ないので、うちが目についたのではないでしょうか。

地域に新しい風を取り入れるとしたら、やっぱり首都圏から優秀な人材を多く採用しないといけません。彼らの働きが、今の若手社員の刺激になります。感化させるんです。地元にも優秀な人材はいるので、一丸となってワイワイやってくれています。そこに首都圏から来た人たちを向い入れ、新しいシナジーを生んでいくんです。

こういう体制にさせてもらったのには、地域への恩返しの意識が強いですね。僕、生まれは蒲原なんですが、両親は北海道なんですよ。親父は新幹線とか東名高速道路が開通するときにこちらへ出てきました。仕事で富士川の砂利をとって、それを骨材として売ったところから会社が始まっています。蒲原に住んだのは近くに富士山があっただけとのこと。

そんなこともあって、僕もすごく富士山が好きなんです。ロゴやいろんな物に富士山のモチーフを取り入れています。このオフィスの社長室からも富士山が見えるようになっているんです。

スルガノホールディングス株式会社ロゴマーク

静岡の人っておっとりしていますよね。県民性ですね。とくに蒲原の人たちって、おっとりの極みでガツガツがまったくない。僕は血が北海道なので、おっとりしていないんです。何か見つけてやろうって、いつも思っています。蒲原の良さを俯瞰して見ている自分がいるんですね。俯瞰して見るので、「蒲原はポテンシャルあるのに」と思ってしまうのかもしれません。

社長室から見える富士山

ポテンシャルって言葉自体ネガティブだよね。

ポテンシャルって、その可能性が発揮されていたらそもそも使われていない言葉ですよね。そんなネガティブワードをポジティブに変えたいです。何よりこの景色。富士山が良く見える! じつは富士山をはじめ、足柄連山や愛鷹山、伊豆半島、三保半島などの美しい景色がよく見える場所がトライアルパークにもあるんです。

だから市長を説得する時、車でわざとトライアルパークとは逆方向に向かいました。目をつむってもらってからUターンをする。そして「初めて静岡に来るところを想像してください」と言いながら、富士川橋のところで目を開けてもらいました。目の前には夕暮れの富士山と駿河湾が見えるわけですね。

トライアルパークの土地まで行った時も、展望台に上がりながらもう一度目をつむってもらいました。目を開けたら、もちろん知っている景色だろうけど、「これはすごいな!」と唸っていました。とくにトライアルパークみたいに、山並みが全部連なって見えるところなんてほとんどないので、「なんだここは!」って驚くんです。

「これが静岡市の玄関口ですよ」と。「このポテンシャルを活かして道の駅やりませんか?」と市長にお願いしたんです。

スルガノホールディングスのコンセプト

スルガノホールディングスのコンセプトは二つ。「このまちは きっともっと ”おもしろい”」「このまちに無いものを無限にやろう」ですね。位置付けとしては「まちづくりベンチャー企業」です。

これから蒲原では新しい取り組みがどんどん進んでいきます。「トライアルパーク」や「地域循環型バス〝KART〟(カート)」にはじまり、教育では施設一体型の小中一貫教育が始まります。新設のモデル校として一例目が行われるんですよ。

こういった新しい取り組みに地域住民が反対すると困りますよね。そこを「栗山がやるならいいかな」と思ってもらえることが大事です。衰退している田舎町で、若手の自分が頑張っているイメージができれば、ご年配の方々も応援してくれるんです。

情報はなるべくオープンにするようにしています。「スルガノタイムズ」っていう新聞が玄関にあったの、気づきましたか。WEBやSNSでも情報発信していますが、会社にやってくる方々に渡すには紙がいいですよね。

内容としては、僕が生まれてから今の事業を始めるまでの流れや、これからの展望などが書いてあります。デザイナーと一緒に考えて、あえて新聞にしました。わかりやすいこともあってか、自治会の方々からもよく声がかかります。「トライアルパークの説明してよ」って。

普通だったら事業説明会なんですが、雰囲気はあくまでもフランクに。地域の方々にしっかり説明することで、「蒲原は栗山に任せておけば大丈夫だな」って信頼関係ができます。とくにマダムから人気があるみたいです、僕(笑)

ただ、むやみに新しいものをまちにつくればいいって話でもありません。他の自治体では、若手の声で新しい建物をつくったけど、駅前が衰退しちゃった例もあるし、大手のショッピングモールができたせいで地元の商店街が潰れちゃった例もあります。大手ショッピングモールの参入は悪いことではないですが、地域発展という意味ではよくないこともあります。

時代は生き物なので、その時々で戦略は変わってくるんですよ。今なんて、コロナでテナントが次々に空いていますよね。「この隙間に新しい時代がやってくる」と言われています。若手ならではの発想で柔軟に発想していかなければ、生き残れなくなるでしょう。

そんなことばかり考えているので、よく「起業家」と言われます。でも、そうではないですね。種まきをしているだけなんです。水をあげて肥料をあげて、大木にしていくのは僕の仕事ではない。大木になった時には僕は経営にはいないでしょうから。

いい会社、いい社長をいっぱいつくりたいだけなんです。何ならお金持ちだっていっぱいつくりたい。お金がすべてではないけど、人生の幸福論でいうと、お金の占めるウエイトは大きいでしょう。そこで絶対にぶれちゃいけないのは「公益資本主義」という考え方。つまり、まちへの恩返しですね。

残業ゼロ、有給取得率100%

とにかく仕事着はラフです。スーツ、ネクタイの人もいないです。残業もゼロ。17時になったらすぐ帰ります。有給も100%取ってもらいます。

だって人生のうち、仕事より家族といる時間の方が大切ですので。毎日21時まで仕事して、子どもの寝顔見るだけの人生はつまらないし、家族の人たちも幸福じゃないです。残業3時間やって11時間働くのも、17時に終わるようにタイムスケジュール組んでキチキチ働くのも、仕上がりでいったら同じだと思うんですよね。

だから、スルガノホールディングスの社員は、みんな17時に帰るために仕事を調整しています。16時55分ごろになるとそわそわし始めて、遅くても17時7分ごろにはみんな帰っています。残ってるのは自分だけです。でも帰らなきゃなって思います。

打ち合わせが長引いて17時半ごろに戻ってきた場合なんかは、ネットの掲示板で情報共有しています。社内の会議もみんなオンライン。なんなら、ちょっとした報告や会話も直接会わずにZoomしている時があります。資料もすべてクラウド保存で効率重視です。なにより7社分、すべての資料が紙で提出されたらとんでもないことになりますからね(笑)

同じく駿河重機も残業はさせないし、有給を取るのも当たり前です。こんな会社、建設業ではほとんどないんじゃないかと。正社員で採用した人が一回目の給料日に言いに来ましたよ。「社長、面接での内容は絶対ウソだと思いました」って(笑)。給料は良いし、有給も取れるなんて、採用のためにウソを言ってると思われていたんですね。「前の会社は残業させるし、残業代もらえない。重機はオンボロ、会社もオンボロ、なのに赤字だったんです。駿河重機はそんなに儲かっているんですか?」って聞かれました。僕は「わからない」って答えておきました(笑)

これも全部、みんなが頑張っているからです。先ほども言ったように、みんなが17時に終われるように効率を重視してやってくれています。他の会社が休憩とか無駄話をしている時間も、みんなの給料につながっていると考えている。それがホールディングス全社共通の考え方です。

社内の風通しもとてもいいです。大きい事業をやる際に、すごく悩んで提案してきたら一発OKにしてしまします。「そんなに悩んで提案してきたんだから、絶対いいに決まってるじゃん。いいよそれで」と。少しアドバイスすることもありますが、真剣に考えてきた仲間に「だってみんなで考えて来たんでしょ。それ最強じゃん!」ってなりますよ。

そうすることにも効率があります。予算も計画も、ちゃんと裏がとれている資料を社員たちはつくってくれます。そんな資料があれば、いい企画になるに決まってるんです。浅い考えではないことを、僕は知っているんです。

社員を信頼しているからできることですね。社員も、自分が信じられているからパフォーマンスを発揮できる。僕も安心して仕事を任せられる。相乗効果ですね。

頑張っている社員は後押ししたいんです。だって僕が代表になった時、営業とか経営とかまったくやったことがなくて、後からビジネス書を読んだり青年会議所の先輩たちから学んだことばかりです。環境が人を成長させるとわかっているんです。必死にやれば力は自然とついてくる。信じておけば大丈夫ですよ。

「蒲原っぽくないね」が「蒲原っぽいね」に変わっていく

備品一つ買うにもあれこれ悩んでる時間が惜しいです。パソコンの起動が遅くなって、フリーズして5分、10分無駄にするくらいなら、すぐに買い換えます。そんなの一ヶ月あれば元が取れますよ。駿河重機でいうと、社有車も2回目の車検で絶対買い換えます。みんなも新しいものを使いたいはずです。

この新社屋も、みんな働きたい気分になるし、みんなワクワクするからと、新しいデザインを取り入れました。「蒲原っぽくないね」って言われるのも狙いです。だいたい道の反対側の旧社屋を訪れた人は、振り返って新社屋を見るとワッと驚きますよ。

でもきっと10年後には、「蒲原っぽくないね」が「蒲原っぽいね」に変わっていくはずです。先ほど言った民泊やトライアルパークもそうです。オシャレで尖ったものをやっていきます。モダンな景観でまちづくりをやっていくと、10年後には「この社屋は蒲原っぽいよね。そういうまちだもん!」に変わるんです。

静岡市街の鷹匠なんかは「オシャレなまち」ってイメージがあるけど、10年後は「ああ、あのオシャレな蒲原ね」ってなりますよ、きっと。それをやるのが僕たちと蒲原の宿命なんです。

きっと大手企業の中にも、うちで仕事したいと思う方がいるでしょうね。たしかに、安定度で考えたら大手に劣るかもしれませんが、うちで働いたほうが絶対楽しいですよ。もちろん来てくださったからには「騙された」と思ってほしくありません。毎日ニコニコ、ワクワクする仕事をしないと。

無いものを無限にやりたい。「また何か始まったぞ!」って

いつもワクワクしていたいです。月曜日の朝、いかにワクワクして起きられるかが勝負ですね。「今週も始まっちゃたよ」と「よし、今週も始まったぞ!」の違いで、人生が変わってくるでしょう。そんな楽しい会社にしていきたいです。

とはいっても、早く帰らないといけないし、時間はないのでドリンクバーで立ち話という名の小会議をしたり、天気が良ければ屋外で打ち合わせもします。アポイントがなければデッキで新作ビールの試飲会もするし、そのままクラフトビール目的に静岡のまちに繰り出すこともあります。遊びの延長で仕事をしている感じです。

2Fデッキスペース

「ワクワクを目指す」と口で言うのは簡単ですよね。大切なのは「何をやるか」です。最近のワクワクについてお話しします。

社屋には筋トレルームがあるんです。ドリンクコーナーにはプロテインも揃っていて、いつでも体づくりができるようになっています。

最初は福利厚生のためでしたが、「ここにパーソナルトレーナーがいたらおもしろいですね」と社員が言ったので、本当に採用してしまいました。

就業中は筋トレルームが空いちゃいますよね。もったいないので、空き時間は地域みなさんに解放しようと思っています。これで蒲原に住む人たちの健康も促進してしまって、うまくいったら駅の近くにパーソナルジムもつくりたいです。

福利厚生として作ったけど、地域の皆さんにも使ってもらおうとなったトレーニングジム

ないものを無限にやりたいので、蒲原にないジムもほしくなりました。パーソナルトレーナーを社員で雇おうとする企業はまずないですよ。でも、それがおもしろい。「また何か始まったぞ!」っていうパフォーマンスの意味でもおもしろいですよね。ワクワクしますよね。遊びじゃなくて、仕事しながら楽しむのです。

そのパーソナルトレーナーの方は、保育士から介護士までの資格を持っています。分社化して社長になってもらえば保育所、介護施設や福祉施設もできますよね。女性社員が増えてきたので、まずは社内託児所をつくりたいです。グループ会社の株式会社そこあげが運営する飲食店「すずとら」と「蒲原館」は、女性が10名程勤務していますので。女性の活躍をうちは積極的にやっていきたいですね。

株式会社そこあげは、いずれ役員を全員女性にしたいと思っています。子育てで稼ぎが減ってしまう不安をなくすためにも、有給・育休・男性の育休もちゃんと取れるようにします。社内に託児所があればもっと安心できるでしょう。

こんなふうに、楽しみながらいつも仕事のことを考えています。車で走っている時もまちのことを見ていますね。

アクセスの良い広い土地があればスタジアムをつくろうとか、ここは商業施設にしようとか、日常の中でもシミュレーションしています。土地の活用も雇用の創出も、教育に関しても、ぜーんぶ日常的に考えちゃっています。

一緒にワクワクしませんか?

これまで蒲原の小学校と中学校で、蒲原夢講座という特別授業をやってきました。

そこでは毎年、「蒲原で過ごしていくのが楽しみになりました!」とか「大人になったら駿河重機で働きたいです!」と言ってくれる子が必ず何人かいました。もう六年もやってきたので、一番早い子でもう大学生になったのかな。この子たちが卒業して、本当にうちへ来てほしいなって思いますね。

現在は県外から来てくれた社員がほとんどですね。地元で求人を出していなかったこともありますが。もちろん、地元採用もいいです。今はパティシエ、そこあげの業務、トライアルパークのスタッフの求人なんかを出しています。

丸投げで無責任にやらせるわけではないですが、毎日イベントをやっているみたいに働きたい人は大歓迎ですね。僕の目指しているのは、そうやってワクワクできる会社です。

何度も言いますが、楽しく働かなきゃ。そんな企業が静岡に増えれば、自然と静岡に住みたい人は増えるでしょう。これまで地元の会社が出来ていなかったことを、僕らがやっていきますよ。

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