2026.09.17

「大きくしない経営」で地域を明るく照らす。「幸せ一番」を貫く家づくり | 株式会社山田工務店 山田耕治社長インタビュー

サムネイル画像 「エリアを狭く深くする理由」株式会社山田工務店 代表取締役 山田耕治様 

小さな修繕仕事が終わったとき、お客様から『本当にありがとう』と心から感謝されたんです。私や社員、そして大工さんや職人さんたちの満足度は比べ物にならないほど高かった。そのとき、人の役に立っているという本物のやりがいを肌で感じたんです。

——そう語るのは、静岡県焼津市・藤枝市を中心に、地域に根ざした家づくりを続ける株式会社山田工務店の代表取締役・山田耕治さんです。

地方都市における深刻な人口減少、そして建設業界全体における若手人材の不足。さらに、工務店が廃業してしまい「誰にメンテナンスを頼めばいいかわからない」と困り果てるお客様の増加など、現在の住宅産業を取り巻く環境は決して平坦ではありません。

そのような荒波の中にありながら、山田工務店は限定されたエリアに特化し、17期連続の増収増益を達成。年間新築120棟、リフォーム1500件を手がけるまでに着実に成長を遂げてきました。

「誠実なものづくり」を愚直に積み重ね、2026年で創業70周年の節目を迎えた山田工務店。かつての葛藤や、「大きくしない経営」に込めたお客様への責任感、独自の組織・人財育成、そして新たにオープンした住宅展示場への想いについて、深くお話を伺いました。

インタビューに答える山田社長

 リフォームで得た本物の喜び

家業に入った当初、私が目標にしていたのはゼネコンのような総合建設会社でした。短期間で山田工務店を大きくすることが成功だと信じて疑わず、大きな建物の受注を熱心に進めていました。実際に大型案件の受注に成功した一方、胸の内にあったのは「楽しくない。何かが違う」という違和感でした。

企業を相手にした仕事は、どうしても価格の安さばかりが求められる世界になりがちです。仕事をしていてもやりがいを感じられない。ただ忙しいだけの日々に、何のためにこの仕事をしているんだろうと深く悩みました。

そんなとき、新築の仕事の合間に、地域の個人のお客様から舞い込むようになった「小さなリフォーム」が、当社の運命を大きく変えることになります。雨漏りしている家を直したり、汲み取りトイレを水洗トイレに直したり。そういう、どこに頼んでいいか分からない小さな困りごとを解決すると、お客様が安堵の表情で『本当にありがとう』と言ってくださったんです。これこそが、私たちが理想とする仕事だと確信しました。

大きなビルを建てることでは得られなかった、一人のお客様との心の通い合い。この体験をきっかけに、住宅・リフォームの専門会社へと大きく舵を切りました。

 目の届く範囲での「大きくしない経営」

住宅という一生に一度の買い物は、建てて終わりではありません。快適な性能を維持し、雨漏りや設備の劣化を防ぐためには、数十年におよぶ定期的なメンテナンスが不可欠です。

メンテナンスの責任を最後まで果たすためには、自分の目が届く範囲でなければなりません。だからこそ、私たちはお客様からお電話をいただいてから「30分以内に駆けつけられる距離」に限定してサービスを展開しています。

この「狭く深く」というエリア戦略は、一見すると地味で派手さはありません。しかし、地域に根を張り続けるからこそ、お客様との間に親戚同士のような情の厚い絆が生まれます。

地元に拠点を置く職人さんが、何かあればすぐに駆けつけてくれる。この圧倒的な安心感こそが、お客様が地元の山田工務店を選んでくださる一番の理由なんです。この地域のお客様の信頼に、決して甘えてはならないといつも自分を戒めています。

「現場きれい」の徹底が、職人の誇りと高品質を引き出す

私は現場監督出身ですので、ものづくりの品質管理には人一倍厳しく臨んでいます。新築事業を始めたばかりの頃、職人さんによって「仕上がりが良い家」と「仕上がりが雑な家」にブレがあることに気づきました。

何が違うんだろうと仕事を注意深く観察すると、腕のいい職人さんの現場は例外なく道具が美しく並べられ、掃除が徹底されている。現場が綺麗な人は、仕事も絶対に綺麗なんです。そこに気づいて、社内で「現場きれい」という方針を掲げ、明確な基準書を作りました。仮設トイレの清掃、道具を整理するための棚の設置、傷を防ぐ床板の養生方法にいたるまで、すべてに細かな基準が設けられています。

山田工務店の「現場きれい」の基準がわかる冊子の1ページ
「現場きれい」は明確な基準で守られている

社長として現在も月に一度、欠かさず行っているのが「現場パトロール」です。私と現場監督3人が、多いときには15か所の現場を回ります。

あらかじめ『何月何日に行きます』と職人さんたちに伝えてあります。すると、職人さんたちの方から『社長、早くうちの現場に来てください』と言われます。自分はこれだけ現場を綺麗に保って、いい仕事をしている。その努力を会社に認めてもらいたい、という誇りを持ってくれているからです。

山田工務店では、職人さんたちを下請けではなく、対等な「パートナーさん」と呼びます。建前(たてまえ)※の日にはお弁当を差し入れ、夏の酷暑には現場用の冷風機購入補助金を支給するなど、現場の働く環境づくりを最優先に考え、リスペクトを形にしています。その代わり、求める品質への妥協は一切ありません。「職人を本気で大切にする。その代わり、最高の仕事で返してもらう」という、プロ同士の厚い信頼関係を大事にしています。

また、工事が始まる際には、お施主様ご家族と、その家を実際に建てる基礎屋、大工、水道屋、電気屋が一堂に会する「着工式」を行います。『私がこの家の電気を担当します』と一人ひとりお施主様の前で挨拶をします。誰の家か分からないまま図面通りにつくるよりも、お客様の顔や、お子さんの笑顔が頭に浮かんでいるほうが、職人さんも『絶対にいい家を作ろう』と気持ちが入るんです。

※建前とは、柱が組み上がり家のかたちが完成するお祝いの日です。

感謝を全社で分かち合い、人間性を育む

会社が成長し、社員が増えるにつれて、頭を抱えるような社内トラブルも多く経験しました。技術や知識を教えるだけでは解決しない、働く側の「心や考え方の問題」の解消に、壁を感じるようになりました。

悩んでいたときに出会ったのが、ホテルリッツ・カールトンのクレド(信条)でした。これをお手本にして、山田工務店の価値観をまとめた「ミッション」「クレド」を策定しました。今では「経営計画書」という手帳にして、毎朝全員でその日のページを読み上げています。

当社の朝礼では、もう一つ、特徴的な習慣があります。お客様から毎日届くアンケートハガキを、全員の前で読み上げ、拍手でお祝いするのです。アンケートには、営業や設計、監督だけでなく、現場で作業したパートナーの職人さんの名前もたくさん書かれています。そのお褒めの言葉をパートナーさんにも即座に共有します。すると、職人さんも『こんなに喜んでもらえたなら、次もまた山田工務店と仕事をしたい』と、さらに丁寧に仕事に励んでくださるのです。社員同士も『あの人がこんなに喜ばれている、自分も負けずに頑張ろう』と刺激し合い、社内が自然とポジティブなモチベーションが広がっています。

お客様からの手書きのアンケートはがき
アンケートのはがき

私が大切にコピーして持ち歩いている、一枚の手紙があります。年に一度、カレンダーを配るお客様感謝デーの際、あるお客様の玄関ドアに貼られていた手紙です。

毎年来ていただいているのに、いつもお留守にしていて申し訳ありません。毎年冬が来るたびに、山田工務店さんの断熱材の家にして良かったと実感しています。朝一度温めると、日中は暖房を切っても暖かさが残っている。素敵な家を建てていただき、本当に感謝しています

この、建てた後もずっと続く、お客様との温かいお付き合いこそが、私たちが仕事を通じて得たい姿なんです。

さらに、社員全員で人間学の雑誌『致知』を読み、感想を共有し合う「社内木鶏会」を10年以上継続しています。私たちの採用基準は、昔から一貫して『素直で人柄がいいこと』。技術や知識は後からいくらでも教えられます。それよりも、人間としてどう生きるか、仲間やお客様を大切にできるかが一番重要です。

会社は、仕事を通じて人間として成長する場。社員、パートナー、そしてお客様、すべてのかかわる人が幸せになれる会社であるために、人間性を育む機会を絶やしません。

「はっぴいさん」と親しまれる理由とHAPPY VILLAGEの設計思想

2026年5月にオープンした、3棟の等身大リアルサイズモデルハウスが並ぶ「HAPPY VILLAGE」。新築ブランド「はっぴいハウス」や、不動産部門の「はっぴい不動産」など、当社の事業には、共通して「はっぴい」という言葉が冠されています。

まだ世間でリフォームや修繕という言葉の認知度が高くなかった時代。常務が、「私たちがお客様に一番伝えたい想いが、ストレートに伝わる言葉」として思いついたのが、このはっぴいという言葉でした。

リフォームを通じて丁寧にお客様に寄り添い続けるうち、地域の人々はいつしか、会社の名前である「山田工務店さん」や担当者個人の名前ではなく、親しみを込めて「はっぴいさん」と呼んでくださるようになったのです。この愛称こそが、山田工務店のブレないブランドアイデンティティにつながっています。

そして、「家をより買いやすくし、すべての人に幸せを届ける」という想いを、具体的に体験できる場所として誕生したのがHAPPY VILLAGEです。

「物語と過ごす家」のリビングルーム
HAPPY VILLAGE内の「物語と過ごす家」

かつては総合住宅展示場(住宅公園)にも出展していましたが、そこでの経験が、この施設を構想する大きなきっかけになりました。 一般的な住宅展示場にあるモデルハウスは、夢やワクワク感が溢れていてとても魅力的です。しかし、どうしても規模が大きくて豪華な仕様になりがちで、実際に自分たちが建てる家としてはイメージが少し湧きにくいという面もあります。夢を膨らませる一方で、無理な背伸びをしてしまったり、資金計画に迷ったりする方もいらっしゃいます。

だからこそ、私たちは「実際に暮らす等身大(リアルサイズ)の家」をそのまま見て、納得して判断していただきたいという強い想いがありました。

HAPPY VILLAGEに並ぶ3棟のモデルハウスは、現実の暮らしに即したリアルな広さです。「旅する家」「物語と過ごす家」「ヒーローが帰る家」という、それぞれ具体的な家族像(読書好きな家族、キャンプが好きな家族など)を想定した、3つの家が並んでいます。それによって、同じ会社でもここまで幅広く対応できることを知っていただけます。また、注文住宅でありながら、総額いくらになるかの価格も明示されているのが特徴です。家づくりにかかる費用が最初からクリアなため、家を建てたことがない人でも『これなら自分たちの予算内で無理なく建てられる』と安心して一歩を踏み出せる設計になっています。

そして、このHAPPY VILLAGEの仕組みは、お客様だけでなく働く社員にとっても非常に大きなメリットをもたらしています。実物を見ながら、空間の広さや実際の収まり具合、細部の仕上がりを社員が説明できるので、圧倒的に商談がスムーズになります。若手が早期に活躍でき、イキイキと働ける環境をつくる。このようにHAPPY VILLAGEには、お客様のためだけでなく、社員の働きやすさのためという背景もあります。

ハッピービレッジ外観

2026年で創業70周年を迎えましたが、100周年に向けた「次の30年」のバトンは、すでに次世代の経営幹部たちへと引き継がれつつあります。

誠実で、明るく、頼もしい社員たちが、これからも静岡の地域を、そこに暮らす家族の未来を、明るく照らし続けていきます!

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